いつもと同じ朝のはずだった
湯気の向こうに 君の背中
言葉さえも交わさず
ドアが静かに閉じる音
触れれば解けた手を
なぜ今日だけ離したんだろう
その小さな綻びが
すべてを攫っていった
一秒の呼吸 一秒の躊躇い
もし もう少しだけ
あの指を 掴んでいたなら
ねえ あのキスを
交わしていたら
運命は 少し
ズレてくれただろうか
なんてことない朝が
いまは 果てしなく遠くて
一秒のすき間に 君を
置き去りにしてしまった
君のマグカップ 音も立てず
台所の隅で眠ってる
いつから僕は
温もりの意味を忘れてた?
止まった時間に 何度も触れて
“またね”の一言が
胸の奥で泣いている
ねえ あと少し
躊躇っていたら
その先の悲しみを
変えられたのかな
交差点の信号よりも
赤くともる僕の後悔
一秒のすき間に 君を
置き去りにしてしまった
世界は 何も知らない顔で
陽を昇らせるけれど
僕だけが知っている
昇らない陽もあることを
ねえ もしもう一度
指先が触れたなら
全てをやり直すように
優しく君を見送るよ
そして あの一秒を
抱きしめて
もう 二度と手放さない