もう帰る場所無い 行く場所も無いんだよ もう
この街の歌は 古傷にも 擦り傷にも
抜け道の入り口は17時だけ開けておく 環状線6番目の駅
瓶ビールの王冠が通行書の代わり
差し出された手のひらに音も無く乗せろ
地下一階シャッター街一店舗だけ開いてるお店
ここのコーヒーは美味しいからほら君も飲みなよ
地下二階西の端この上がちょうど明石大橋
ここまで徒歩で10分てとこ
それはこの上の時間で表した場合で
ここはもう違う時間が流れる
さっき飲んだコーヒーで君の身体は変わってく
疲れることもないし 食べる必要もない
君は君の身体を明確に理解でき脳はそれを存分に扱うことが出来る
美しい歌を歌うのもいいしそれを作るのもいい
必要なものは全部揃ってる
ちょっと待って僕そこには行きたくない
もう帰る場所ない行く場所も無いんだよ もう
この街の歌は古傷にも 擦り傷にも
俗にまみれ毒にまみれ逃げ出したくなるくらいの生きにくい普通の日に僕は帰りたい
目を開けたくない明日が来るのがわかってても
疲れた脳を休ませる為に眠りにつきたい
処理落ちした情報で足元がギクシャク
倒れこんで苦し紛れの密約 落し物また3つ4つ
いつだってないものが欲しくなるから
絶妙な筆圧で 文脈から逸脱
ビルとビルの隙間 擦れていく風が
君の声のように 聞こえたんだ 聞こえたんだ
そうか 帰りたいか それはとても残念だ
君とはうまくやれそうな気がしてたんだけど
来た時のようには行かないだろうけど 気をつけて
鉄格子の向こうから 人間の吠える声
状況を把握する前に首筋をつかまれる
反射的に振り払う あっけなく外れるが
腐った肉と爪がぶらさがっている
粘土の高い液体に腰まで浸かって動けない
いやらしい音を立てて飛ぶ見たこともない虫に
体液を奪われ 抵抗して動くと
身体が余計に 沈んでしまうから
もう それをする気力も無くなった
首元まで浸かり それ以外の部分は虫に覆われている
「ごめん 遅くなったね」
誰?
「思ったよりもだいぶ深いところにいたからね
見つけるのがね大変だったんだ
でも 間に合ったね」
ビルとビルの隙間 擦れていく風が
君の声のように 聞こえたんだ 聞こえたんだ
身体が動く 液体の粘土と水位がさがっていく
足首程の浅瀬を歩く 流れてくる下手くそな笹舟
石にひっかかったサッカーソックス
ふやけた文庫本 チューハイの空き缶
これ これ全部僕のだ
拾いながら歩く 僕はこの川を知っている
貯水池に繋がる トンネルをくぐる
もう帰る場所無い 行く場所も無いんだよ もう
この街の歌は古傷にも 擦り傷にも